大分合同新聞 GX 2020年10月6日号 に掲載されました。

「育てる漁業」へ先端技術導入

|カキ養殖新方式 自動化も進める

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大分合同新聞 GX 2020.10.06

限りある資源を守り持続可能な水産業とするため、「捕る漁業」から「育てる漁業」への転換が世界的に進んでいる。大分県は豊かな海に面し、漁業が盛んだが、近年は先端技術を導入した養殖が注目される。

 佐伯市大入島近くの佐伯湾。地元の水産加工販売「新栄丸」のマガキ養殖用バスケット(かご)が浮かぶ。フジツボなどの付着を防ぐため海中に沈めず、定期的に“天日干し”もする。シングルシード(一粒ガキ)のオリジナル新ブランド「大入島オイスター」はまさに手塩にかけて育てられ、今シーズンから本格的に売り出される。

 当面の目標は年間100万個の出荷。生食用として飲食店だけでなく消費者への直販に力を入れ、投資型クラウドファンディングで応援も募る。「佐伯市シングルシード養殖協議会」を立ち上げ、他の漁業者を巻き込み、「オール佐伯」での産地づくりを目指している。

 代表の宮本新一さん(42)は、ニュージーランドなどでのカキ養殖に注目。2019年、フロートにつないだかごにバラバラの状態でカキを入れ、海面に浮かべて育てる方式を導入した。カキへのストレスが少ないとされ、濃厚な身も育つという。波に削られ、形もきれいに仕上がる。

 今年4月には、▽クペルと呼ばれるプレートに付着した天然の稚貝を一粒ガキにばらす▽かごへのカキの充填じゅうてんや回収▽カキをサイズ別に選別―といった自動化システムがほぼそろった。定期的にかごを反転させ、天日にさらす作業は船の動力を利用し、1列3分ほどで完了するという。

 プランクトンを食べるカキ養殖を、赤潮対策に役立てる取り組みも本年度、県と協力して始まった。カキ1個当たり1日に200㍑の水をろ過するという浄化力を活用。赤潮が発生しやすい海域でカキを養殖し、近くの養殖魚を守る試みだ。貝殻は細かく砕いて県内の有機農園が肥料として役立てる。海と山の生産者が連携した資源循環だ。

 宮本さんは「カキを作って売れる基盤が整えば、島に仕事ができ、活性化につながる。働き方も含め新しいビジネスモデルを構築し、次の世代が漁業をしやすい環境をつくりたい」と話した